結露計算の条件が変わりました
さいたま断熱改修会議 議長の佐藤です。
2022年10月1日より、住宅性能表示制度の評価基準において、内部結露計算の条件が一部変更されました。
変更点は、室内環境の設定が10℃/70%から15℃/60%になったこと。
外気条件は、建設地の最寒月の平均気温を従来の1981~95年の標準年EA気象データに基づいていたものから、2002~2010年の最新版となったこと。
具体的に、室内の絶対水蒸気量が約1g/kg程度増加している条件です。
これにより、従来の温暖地域では不要とされていたセルロースファイバー充填時の防湿シートが、弊社の6地域でも防湿シートが必要と判断される場所が増える可能性があります。
標準年EA気象データにおける最寒月の平均気温とは?
EA気象データとは、気象庁のアメダスで観測された気象データの欠測を補完し、異常値と判断されるデータを修正。
アメダスで観測されていない気象要素のデータを補完して作成された、日本全国の気象データのこと。
このEA気象データには、現地気圧、気温、相対湿度、絶対湿度、全天日射量、大気放射量、風向、風速、降水量、日照時間の10種類の気象要素の時別値および日別値が含まれます。
1981年〜2020年までのEA気象データは、年ごとに整備され、収録されている地点数は年によって異なりますが、約840ほど。
また、これらの年別EA気象データ(実在年気象データ)に加えて、標準年EA気象データも公開されています。
EA気象データについての詳細は、下記よりご覧ください。
https://www.saitama-dannetsu.com/assets/uploads/2022/10/EA_fundamental_2010_220418.pdf
EA気象データはどこで手に入る?
調べたところによると、(株)気象データシステムから販売されていました。
https://www.metds.co.jp/product/ea/eadata/
主にシミュレーションソフトなどのバックデータとしても使われているようです。
結露判定はどうしたら良い?
さらに調べてみると、(一社)住宅性能評価・表示協会から、内部結露計算シートに関するお知らせが出されていました。
その内容を下記に記載します。
令和4年10月1日より住宅性能評価等の申請に使用可能な新条件に対応した内部結露計算シートの提供方法などについて。
①提供方法
当協会会員機関の登録住宅性能評価機関から無償で提供を受けることができます。
したがって、申請予定の登録住宅性能評価機関にお問い合わせください。
当協会からの提供はありませんので、ご了承ください。
②提供内容
以下のデータ等を含むExcelファイル、内部結露計算シート ver2.0、計算例、解説、アメダス地点の外気温一覧表(標準年EA気象データ2010年版※)
※「拡張アメダス気象データ/株式会社気象データシステム」の2001年から2010年までの標準年EA気象データ
③その他
有料書籍「長期優良住宅認定等に係る技術的審査マニュアル(2018)」の付録として提供している内部結露計算シート(ver1.0)やアメダス地点の外気温一覧表については、令和4年10月1日以降、住宅性能評価等の申請に使用できなくなります。
実際のシートは、JIOのサイトからダウンロードできました。
早速、計算をしてみました。
地域は6地域のうち、埼玉県さいたま市を対象として、(株)気象データシステムの拡張アメダスデータ、標準年EA気象データ2010年版によると、内部結露計算に使用する最寒月の平均気温は3.4℃、表面結露計算に使用する最寒月の日最低気温の平均値は-1.2℃です。
この条件下で、室内防湿フィルムを使用しない場合と、セルロースファイバー120mmを充填した場合、面材に合板を使用し、外貼りにネオマフォームを使用する場合としない場合の計算結果を比較してみました。
CASE1
最初に、45mmのネオマフォームを付加断熱とした場合、結露は全く発生しませんでした。
CASE2
次に、充填のみで付加断熱を行わず、耐力面材と気密材として貼った合板を室内側に配置した場合、結露が発生しました。
CASE3
充填のみで付加断熱をしない場合、耐力面材・気密材を透湿抵抗の低いハイベストウッドに変更しても、室内側に結露が発生することがわかりました。
今回の結露計算シートは、性能表示に用いられる公式の計算シートですが、室内・屋外の温湿度条件の変更はできません。
また、冬季に限定され、夏季における夏型結露の可能性の計算は不可能です。
高性能住宅では、室温15℃/湿度60%ということはなく、外気温が氷点下になる場合でも結露しないことを確認する必要があります。
このため、ホームズ君の結露計算や岐阜森林アカデミーの辻教授のセミナー受講者へ提供される結露計算シートなどが役立ちます。
これらは定常計算ですが、非定常熱湿気同時移動解析プログラム(WUFIなど)を用いることが望ましいとされています。
ただし、WUFIは非常に高価なソフトウェアであり、気象データも1995年度版と古いと聞いています。
佐藤工務店ではホームズ君や辻先生の定常計算を行っていますが、建設現場がほぼ近所であり、断熱方法も標準的であるため、実際に利用する機会はほとんどありません。
おまけ
以下リンクより、2022年10月5日現在の標準年EA気象データ2010年版を搭載している計算ソフトの一覧が確認できます。
https://www.metds.co.jp/
私の使っているQPEXとホームズ君は2010年版が搭載済。
一方、国のWEBプログラムとWUFIは、1995年度版が搭載されています。
埼玉県内の観測点を標準年気象データ2010年度版で比較してみると、私の住む県南部のさいたま市に比べて県北部の熊谷市は最寒月の平均気温が高いことに驚きました。
有限会社 佐藤工務店一級建築士事務所
一級建築士設計事務所を併設し、新築工事・リノベーション・耐震改修、断熱改修工事が得意です。
安心快適ながら、30年・50年後の暖冷房光熱費と内外装のメンテナンスコストの安い「いい家」が一番だと思っています。
最新の技術と知見によって、お客様に最適な方法をご提案させていただきます。